永:万年浪人!ずいぶん久しぶりやな。どないしとったんや。
ちっとも顔を出さんと。少々心配しとったんや。
万:セン!何を言うてんねん。ひょっとしてボケてんのんちゃうか。
いつきてもセンがおらんから話にならんやろ。
いったいセンこそどないしとったんや。
心配しとるのはこっちや。
永:そうか、心配してくれてたんか。うれしいな。
誰かがわしのことを心配してくれるやなって。
わしもまんざら全くの孤独でもないんやな。
ま、わしは孤独をさびしいともわびしいとも思わんけどな。
しばらくお前のおらんところでさまよっとったんや。
それがどことも教えんけどそれはそれはわびしいところやった。
よくもあんなわびしいところから帰ってきて、またお前と会う気になれたもんや。
もう完全な世捨て人になって野たれ死んでもええんやけど、それもようせんしな。
万:またうそともほんまともつかんこと言って謎めかしてもあかん。
俺はようわかっとるんや。センがどこをうろついていたんか。
わかっとても言わんほうがええやろ。
それにしてもえらい今日はやつれてるな、セン!
それにえらい眠そうやんか。
永:わかるか。実はな今テニスの全米オープンが行われているんや。
日本の錦織圭が第11シードのチリッチという、クロアチアだったかな、
の選手との第2回戦を見たんや。
アメリカ時間で9月2日(木)の午前11時半ごろから始まったん
やけど日本時間ではもうすぐ日付が変わって金曜になるころや。
そこから二人は40度ちかい暑さのコート上でなんと5時間にも
わたる戦いを繰り広げたんや。
戦いの決着がついたんは日本時間で金曜の朝の5時ごろや。
選手も死ぬ思いやろうけど、テレビで観るのもけっこう疲れるんやで。
それから寝ようとしても寝れるもんじゃない。
ま、そういうわけで今日はしんどいんや。
万:センのいうことはわからん。
なんで世捨て人になって野たれ死んでもええといいながら
テニスなんぞに夢中になるんや。
全然マッチしとらんやないか。
永:そうやな、確かに生きるスタイルがちぐはぐで
ちっとも一貫してないように見えるかもしれんな。
けどな野たれ死んでもいいなんて口ではいっているけど、
負けたくないという執念はわしももっているんや。
お前はわしが誰と勝負をしているんやとおもうかもしれんが、
わしかって負けたくない相手はいるんや。
だからわしは錦織選手に勝ってもらいたいんや。
錦織君の敵はわしの敵なんや。テニスでは、
他のスポーツでもみな同じやろうが、コートが自己表現の舞台や、
そこで選手は自分の人格のすべてを出して戦うんや。
わしにもそういう舞台があったらいいなのおもいながら
コートの戦いに魅入られているんや。
わしには自分の人格のすべてをさらけ出して自分自身を表現する
舞台がない。
だからそういう舞台を自分で獲得できたひとたちが
ひたすらうらやましいんや。
万:センのいうことはそこでもおかしいで。
人間だれかって生まれてきて自分がおかれている
状況がいってみれば自分の舞台やないんか。
そこで自分の最高のパーフォーマンスをする
機会は人間みんなに平等に与えられているんや。
センがその歳になるまでそういう機会をいかすことが
できへんかったんなら人間失格もええとこやで!
永:久しぶりだというのにめちゃくちゃ厳しいことを言うなあ、
お前は!けどお前のそういう反応は織り込み済みや。
実はこの夏中暑さにまけて何にも身がはいらんかった。
ええ加減だれかに活を入れてもらいたかったんや。
万:負け惜しみや!嘘や!やるときはやる、
全身全霊をかけてやる!
それ以外に何をするんや?
センみたいに言い訳ばっかりしてたら人生
それだけで終わってしまうで。
それでええんか?負けたくない相手もいるんやろ!?
そんなら当面センのやることはそいつらに勝つための
ことをすればええやんか。ええかセン、やるときはやるんやで。
とりあえずはずっと中断している受験英語談義を再開しようや。
センに聞きたいこともいろいろあるし。
英文解釈談義なんかどうや?
永:うふふふ!うまくわなにはめてやったぞ!
そうこなくてはな万年。
ええぞ!万年!さすがわしの弟子だけのことはある。
万:センは往生際が悪いわ!
もっと素直に状況を受け止めたらどうやねん。
センの言うことやする事はどっか怪しいんや。
怪しい人間は尊敬も信頼もされへんで。
怪しくなくなれや!
永:・・・・・・・!

